今回のテーマは「失恋の心理学」です。
失恋は本当につらいですよね。
大好きだった人と二度と付き合うことは出来ない。そんな厳しい現実に絶望している方も多いと思います。
私ももちろん経験があります。
今回は失恋について、心理学の研究の結果明らかになった、失恋直後から回復するまでの心の段階について説明します。
なぜこんな説明をするかというと、失恋はたしかにつらいけど、回復の道は用意されているってことを説明したいからです。
私のところに相談に来る方で、失恋の傷に耐えきれず、とにかく新しい恋人を求めたり、好きでもない異性と関係を持ったり、恋愛依存的な行動に走ってしまう方がとても多いです。
だけどそれは回復のプロセスを歪ませてしまい、結果として長く苦しむことになります。
そんなことにならないために、失恋からの回復のために『正しく悲しむステップ』を説明します。
ぜひ最後までご覧ください。
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失恋の心理学~悲しい現実を正しく悲しむために~
失恋から恋愛依存に陥ってしまう危険性
今回の内容は、「今現在、辛い失恋から立ち直れないでいる」という方向けになっています。
これは多くの方が当てはまると思います。失恋がつらいのは、基本的に人類共通の話ですから…。
その中でも注意が必要なのが、その恋人と別れたつらさに耐えられなくて、他の人と付き合うことで忘れようとする。例えば、アプリとかでとにかく新しい出会いを探し続けるとか。
自分のつらい気持ちを恋愛で紛らわせようとしてしまう。
こういう方は、恋愛依存に陥る危険があるので注意が必要です。
大切なモノを失うことの痛みとは
失恋に限らず、人は大切なモノを失ったときに、心に強い傷を負います。このような体験を、心理学では対象喪失と呼びます。
モノってカタカナにしてるのは、これが人だけに限らず、様々なものがあてはまるからです。
例えば、愛する人を失うこと。
これは死別の場合や、今回のテーマの失恋や離婚、さらには尊敬していた人を幻滅するなど、心の中の理想の相手が無くなる、というケースもあります。
尊敬していた先生が変な犯罪をしたとか、信頼していた恋人が実は浮気をしていたとか。信じていたのに裏切られた!そんな体験も心の中の理想像としての相手が死んだ、という意味で対象喪失になります。
さらに人以外のケースでも、仕事を失う失業、転職、住み慣れた街を離れる引っ越しとか。環境を失うというケースもあります。
また、自分自身が病気になったりケガしたりで、以前のような健康状態を失う。これも喪失の一つです。
聞いていて気づいたかもしれませんが、これらを経験したことがない人はいないと思います。
人は何かを喪失しながら生きています。
失恋を初め、喪失の辛さというのは避けられない痛みと言えます。
決して味わいたくはないけど、避けられない痛み。
生き物として避けられない体験。それが対象喪失です。
そして、失恋に限らず、これらの喪失に耐えられず、そのつらさを和らげようとして何かに依存する。
依存症になる方の多くが、喪失のつらさに耐えられなかったということが多いです。
対象喪失4つの段階
その対象喪失について、研究したのはイギリスのボウルビィという精神学者です。
研究は第2次世界対戦後に、戦争で親を失った子供を対象に行われています。愛する人を失った対象喪失ですね。
そしてその研究から、対象喪失の苦しみから回復するまでの心の段階に、共通した4つの段階があることを発見しました。
その4つの段階が、①情緒危機、②抗議・否認、③断念、④離脱・再建 の4つです。
失恋後の心の状態も、これと似た形で進みます。
単語だけではよくわからないので、これから1段階ずつ説明していきます。
今のあなたがどの段階にいるか考えながら聞いてみてください。
対象喪失①情緒危機(パニック)
では、まず第一段階の情緒危機からです。
これは失恋直後のパニック状態とも言えるものです。
急に一人になったことの不安や恐怖が溢れ出したり、逆に心が麻痺して何も感じなくなったり。現実が何かがわからなくなり、冷静に頭を働かせて状況を見ることが出来ない状態です。
対象喪失②抗議、否認
続いて第二段階の抗議、否認です。
これは文字通り、『失ったという現実を認められない状態』です。
第一段階から少し心が冷静になってきた状態で、だけど失う前の現実を取り戻そうとする、失った現実を認めてない状態。
失恋の場合だと、相手の気が変われば戻ってくると信じたり、謝れば許してもらえると信じたり、実際に行動にうつして相手に復縁を迫ったり…まだ現実を直視できない状態です。
この頃は絶望半分、希望半分ということで、まだ本当の痛みが来る前段階と言えます。
この段階は悪いものではなく、心が失恋の痛みを受け入れ、乗り越えていく過程で重要になってくるものです。
少しずつ現実に適応していくために、いきなり痛みを感じすぎないように、慣れていくという意味もあると思います。
対象喪失③断念(絶望)
続いて、第三段階の断念です。
現実を直視せず否認していた状態から時間が経ち、『本当にあの頃には戻れないんだ…と現実を認め始めた状態』です。
これが一番つらい。恋人と過ごした日々は二度と帰ってこない。もう崩壊してしまったものなんだと理解してしまったから。
絶望感や無力感に襲われて、生命力そのものが低下してしまいます。
実際に抵抗力が落ちるので、風邪を引いたりとか病気にかかりやすくなります。うつ病などメンタルの病になることもあります。
そしてこのときの絶望感に耐えられず、なんとかこの苦しみを取り除きたいと思えば、一時の快楽としてなにかに依存することもあります。
恋愛依存に陥りやすいのはまさにこのときですね。喪失して空いた穴をなにかで埋めたくなる。だから依存する。
この状態は本当につらくて、いっそ死にたいって思うような状態なので、それを和らげたい気持ちはすごくよくわかります。
ただ、この現実をしっかり受け止められた先に最後の段階が待っています。
対象喪失④離脱・再建
その最後の段階が、離脱・再建です。
大切な人を失った。その現実を受け入れた上で、その状態を心が整理出来る状態。
離脱とは、愛する人に対する執着から解き放たれることです。
そして新しい現実を作り上げることが出来る。そうすると、徐々に新しいものに興味が生まれ始めます。
こうなると、絶望感は薄れ、新しい現実を生きる力が湧いてきます。自然と未来に目が向き始めます。
これが、対象喪失の4段階です。
心は必ず回復する
このように、4段階を経て心は回復していきます。
これは研究の結果明らかになったもので、私が適当に言ってるものではありません。
あなたが今失恋で苦しくてどん底にいたとしても、それでも心は回復するということです。
ただしそのためには、この4段階のそれぞれで、自分の気持ちをしっかり受け止めていく必要があります。
悲しい現実を正しく悲しむ。それがとても大事です。
自分の感情を歪めて、無理やりポジティブシンキングにしようとしたり、苦しみを一時でも忘れようと依存したり…そういうことをすればするほど、回復は遠のきます。
失恋の痛みはあなたの心の中にあるから、あなた自身がその傷をしっかり見つめて癒やしていく必要があるということです。
正しく悲しむために
では、どうすればいいか。それは、自分の中にある思いをあらいざらい隠すことなく振り返るということです。
人は愛する人に対して、必ず両極端な感情を持ちます。愛してるだけということは通常ありえません。
なぜなら、愛していればいるほど、その人の行動に不満も持ちやすいからです。
どうでもいい人に否定されてもあまり辛くないけど、愛する人に否定されたら死ぬほどつらい。それが普通の人間の心です。
愛する光が強くなるほど、影も濃くなる。その両極端の感情を全て自分の中で消化していく必要があります。
例えば、早く吹っ切ろうと思って、元恋人のことを悪く言うなんてことがよくあります。あの人は優しくなかった、貯金もなかった、あんなのとさっさと別れて正解だった!なんて無理やり思い込もうとしたりする。
もしくは、無理やり良い話に持っていこうとして、相手のことを美化して感謝の気持で満たそうとしたり。
こういうのは逆効果です。余計に回復が遅れます。
なぜなら、そうやって押し込んでしまったもう一方の感情が暴れ出すからです。
さっきも言いましたが、様々な感情があって当然なんです。それら全てを自分の中で振り返り整理していった方が、回復に向かうスピードも上がります。
そのためには、日記が有効です。ツイッターとかSNSでつぶやくより、自分しか見ない日記の方が絶対にいいです。
他の人を意識した書き方では、どうしても自分の心にブレーキをかけてしまうからです。また、同情をひこうと思って、自分の境遇を悲劇っぽく話したりもします。
こういった余計な心の働きが、自分の素直な感情を振り返る上では邪魔なんです。なので、自分しか見ない日記が一番いいでしょう。
ただし、あなたになんでも相談出来る友達がいる場合は、その友達に全部聞いてもらうのもいいでしょう。もしくは、カウンセラーや精神科医などに相談してもいいです。
私のプログラムに参加している方も、やはり自分の素直な感情にたくさん向き合い、私に洗いざらい話してくれてる方のほうが早く回復していきます。
絶望を紛らわせようとしない
そしてもうひとつ大事なことが、自分の中に空いた絶望を、他の異性で補おうとしないことです。
今の状態が苦しいから早く回復させたくて新しい異性を探す。これはとても危険な行動です。
これをやると、自分の傷を自分で癒せなくなり、『恋人がいない状態の自分 = 絶望』と自分の心に刻んでしまうからです。
そうなると、常に恋人を求める恋愛依存に陥ってしまいます。
自分で傷を癒やすことを放棄しているわけなので、先ほど説明した4段階目にたどり着けないんです。
恋愛の傷は恋愛でしか癒えない。そんなのは嘘です。傷は、自分の中で過去を整理していくことで段々癒えていき、自然と目が未来に向くのです。
それが先ほど説明した4段階です。
失恋の痛みはとてもつらくて苦しいですが、自分の回復力を信じ、今はそのつらさを受け止めていきましょう。
さあ、喪失を味わおう!
失恋からの回復で一番大事なことは、あなたが体験した対象喪失をしっかり味わうということです。
最近は、ポジティブに考えることが良いことだ。そんな風潮があります。
だけど、ポジティブに考えよう、考えようとすることで、あなたの中にある大事な想いがどんどん抑え込まれていきます。
愛する人に対する思いは一つではありません。
愛してるけど憎しみもあって、振った怒りもあって、うまく付き合えなかった罪悪感もあって、今まで一緒にいてくれた感謝もあって。さらには自分に対する怒りや、振られて孤独な自分に対して哀れみもあって、「どうしてあの時こう出来なかったのか…」という後悔や悲しみ。また、付き合っている時も苦しかったから、一人になれたという解放感が芽生えることもあります。
こういう様々なプラスの感情やマイナスな感情。これは誰にでもあるんです。それが正常な人間なんです。それをしっかり味わい、整理していくことが回復への道で絶対に必要になってきます。
だから無理やりポジティブにならず、しっかり悲しんでいってください。そうすると、恋人がいない現実がやがて普通になって、その現実の中でまた新しい素敵な人との出会いを探し始める。
これが、心の正しいステップなんです。
終わりはいつだって悲しいし、苦しいです。だけど、終わりはいつだって新しいなにかの始まりでもあります。
確かに1つの恋愛は終わりましたが、あなたの人生は何も終わっていません。
1つの終わりは1つの始まりへ。そうやってあなたの人生の中で全てはつながっていきます。
喪失をしっかり味わい、悲しみ尽くすことで、あなたは以前よりも素敵なあなたになれます。その上で、新しいスタートを切っていきましょう!
では、本日の内容は以上です。
最後までご覧いただき誠にありがとうございました。
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