今回のテーマは、「恋愛依存と愛着トラウマの関係」についてです。
・またダメな恋愛をしてしまった
・相手のことばかり考えてしまって苦しい
・別れた方がいいのはわかってるけど別れられない
あなたはこのような苦しい恋愛で悩んでいないでしょうか? また、その原因を自分の性格のせいにしていないでしょうか?
このような悩みの背景には、「恋愛依存」という依存状態が関係してることがあります。そして、その恋愛依存の根底には、愛着の傷、愛着トラウマが隠れていることも少なくありません。
今回は、恋愛依存のしくみと、そこにある愛着トラウマとの深い関係についてお話していきます。
自分の恋愛のクセが問題だとわかっているのに、なかなか変えられない…そんな苦しさを抱えている方にとって、きっとヒントになる内容です。ぜひ最後までご覧ください。
恋愛依存とは?
最初に、「恋愛依存」について簡単に説明します。
恋愛依存は、恋愛によって自分の心の穴を埋めようとする状態です。
たとえば、
・常に相手のことばかり考えてしまう
・好きな人がいないと不安になる
・連絡が来ないだけで涙が出るなど。
それは、一見すると情熱的な恋のようにも見えますが、実際には“安心感のなさ”や“空虚感”を埋めるための行動であることが多いのです。
自分の不安や孤独感を和らげるために、恋愛にすがってしまう。これが恋愛依存の本質です。
恋愛依存が深まる理由
恋愛にすがることで、一時的に不安や孤独感が和らぐと、今度はそこから抜け出すのが怖くなってしまいます。恋愛を失えば、またあの空虚感に飲み込まれてしまう……。それが怖くて、ますます恋愛にしがみついてしまうのです。
その結果、恋人の言いなりになったり、「捨てられるのでは」と怯えてスマホを何度もチェックしたり、恋愛に強く執着することになります。
こうして恋愛依存は、少しずつ、しかし確実に深まっていくのです。
では、なぜ私たちはここまで恋愛に執着してしまうのでしょうか?
その“恋愛依存”の根底には、人との関わり方のクセ=愛着スタイルが深く関係しています。
前回のおさらい:不安型愛着とのつながり
前回の動画では、「愛着スタイル」についてお話しました。 その中でも、恋愛依存と最も関係が深いのが「不安型」の愛着スタイルです。
不安型の人は、相手に嫌われることや見捨てられることに対して強い不安を抱きやすく、つながりを保つために相手に過剰に合わせてしまう傾向があります。 「愛されたい」「嫌われたくない」という気持ちが強いために、恋愛関係に依存的になりやすいのです。
そしてその背景には、子ども時代の“安心できなかった親との関係”がある場合が多いのです。
「見捨てられるかもしれない」と怯える気持ちから、相手の些細な言動にも敏感になり、心が振り回されてしまう。 これは、不安型の人がよく抱える恋愛のパターンです。
では、このような愛着スタイルが、なぜここまで私たちの恋愛に強く影響するのでしょうか?
そこには、幼少期に負った“愛着の傷”=愛着トラウマの存在が関係しています。
愛着トラウマが生み出す恋愛のパターン
恋愛依存の背景には、幼少期に安心して甘えることができなかった経験や、自分の気持ちを受け止めてもらえなかった記憶が隠れていることがあります。
こうした体験が、心の奥深くに“愛着のトラウマ”として残り、大人になってからの恋愛に影響を与えるのです。
たとえば──
- 「愛されるには我慢しないといけない」
- 「感情を出すと嫌われる」
- 「相手に合わせないと見捨てられる」
こうした信念が根づいていると、恋愛において無意識のうちに相手に合わせすぎたり、自分の気持ちを押し殺したりしてしまいます。
さらに、「相手のちょっとした反応に敏感になる」「見捨てられる不安で頭がいっぱいになる」といった状態も、過去に“人の機嫌を伺いながら関係を保ってきた”記憶が影響しているのかもしれません。
こうして形成された「恋愛のパターン」は、本人が自覚しないまま繰り返されてしまうのです。
「愛されたい」の奥にあるもの
「愛されたい」「必要とされたい」──
そう願う気持ちは、ただの甘えや依存ではありません。
それは、誰かとのつながりを通して“安心”を得たいという、私たちのごく自然な欲求です。
子どもにとって、“愛されること”は生きていくために必要な安全の証でした。
親に愛され、守られることでしか生きられなかった子ども時代。
だからこそ、「愛されないかもしれない」という不安は、命の危険と結びつくほどの深い恐れとして心に刻まれているのです。
この「生きるための不安」は、大人になっても完全には消えません。
そして、ときに恋愛というかたちで投影されることがあります。
「相手の言葉で自分の価値を確かめたい」
「離れられたら、自分が壊れてしまう気がする」
そんな思いにとらわれてしまうのは、実はとても自然な心の反応なのです。
「健全な愛」とはどんなもの?
「愛されたい」という思いが苦しさにつながっているとしたら──
それは、“安心できる愛”と“執着する愛”の違いに気づくタイミングかもしれません。
恋愛依存を手放していくには、安心の中で育まれる愛と、不安を埋めるためにしがみつく愛の違いを見つめることが大切です。
本来の愛は、相手がいなくても自分の価値を感じられる状態で成り立っています。
「愛されているから私は大丈夫」ではなく、
「私は私としてここにいていい。だからこそ、愛を受け取れる」
そう思えるようになることが、“健全な愛”の出発点です。そして、この感覚は“本当の自己肯定感“に繋がっていきます。
まずは、自分で自分の不安を理解し、寄り添う力を育てていきましょう。
その力が少しずつ育まれていくことで、自分を見失うことなく、人との関係を築けるようになっていきます。
責めるのではなく、寄り添うという選択
健全な愛を育てていくために必要なのは、まず自分の不安に寄り添う力です。
でもその力がまだ育っていないとき、私たちはうまくいかない恋愛に直面すると、つい自分を責めてしまいます。
「私が悪かったんだ」
「また同じことを繰り返してしまった」
そんなふうに、自分を否定することで状況をなんとか受け止めようとするのです。
でも、本当に必要なのは“責めること”ではありません。
傷ついた自分に、「よくがんばってきたね」と声をかけてあげるような、やさしいまなざしです。
恋愛依存の行動も、過去のあなたが必死に心を守るために選んできた、生きる手段だったのかもしれません。
だからこそ、自分を否定するのではなく、理解しようとする姿勢こそが、変化のはじまりなのです。
気づきが癒しの第一歩
大切なのは、恋愛依存のパターンを無理にやめようとすることではありません。
まずは、「私はこういう不安を抱えていたんだな」と気づくことが、癒しのはじまりです。
自分の反応に意味を見出し、「そうせざるを得なかった理由があったんだ」と理解してあげることで、自分との付き合い方がやわらかく変わっていきます。
私がカウンセリングで大切にしているACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)というアプローチでも、問題をなくそうとするのではなく、その問題とどのように向き合うかを大切にします。
自分とのつながりが変わることで、恋愛のパターンも少しずつ変化していきます。
あなたが、自分を大切にしながら人と関われる未来は、ここからはじまっていきます。
終わりに 恋愛依存は、あなたを守るためのものだった
今回は、「恋愛依存の裏にある愛着トラウマ」についてお話ししました。
うまくいかない恋愛に苦しんでいるあなた。
その行動や感情のひとつひとつには、あなたなりの理由と意味があったはずです。
恋愛にすがってしまったのも、
誰かに必要とされたかったのも、
すべてはあなたが**自分の心を守るために選んだ、大切な“生きる手段”だったのです。
だからこそ、責めなくていい。否定しなくていい。
これからは少しずつ、自分の気持ちに寄り添いながら、
「守るための恋」から「つながるための恋」へと、変化していきましょう。
このチャンネルでは、これからも「愛着トラウマの理解とケア」について、丁寧にわかりやすくお伝えしていきます。
あなたが、自分を大切にしながら人とつながれるように。
心からの安心を育めるように。
これからも一緒に歩んでいきましょう。
今回は以上です。